Amazon出品者の特定商取引法に基づく表記:表示項目・設定場所・個人の氏名と住所の扱い
Amazonで継続的に商品を販売する出品者は、特定商取引法の「通信販売」を行う販売業者に当たり、氏名(名称)・住所・電話番号などを表示する義務を負います。Amazon公式ヘルプも、大口出品者・法人の出品者・継続的に繰り返し出品する個人出品者に対して、出品者情報ページへの表示を求めており、個人出品者は戸籍上の氏名と、自宅であっても現に事業活動をしている住所を表示するよう明記しています。消費者庁の通信販売広告Q&Aには「請求があれば遅滞なく開示する旨を表示して省略できる場合」や「プラットフォーム事業者・バーチャルオフィスの住所を表示できる条件」が示されていますが、Amazonのヘルプページにはその扱いの記載がないため、Amazon上ではAmazonの出品者情報ポリシーに沿って表示するのが前提になります。未表示や虚偽表示は、法律上は指示・業務停止命令、Amazon上は出品の一時停止や出品資格の永久停止の対象になり得ます(2026年9月時点・各公式ページ)。
Amazon出品者が特定商取引法の対象になる理由
特定商取引法は、インターネットで申込みを受けて商品を販売する取引を「通信販売」として規制しています。消費者庁「特定商取引法ガイド」の通信販売のページは、通信販売は隔地者間の取引であり、販売条件の情報はまず広告を通じて提供されるため、広告に表示すべき事項を法律で定めていると説明しています(法第11条)。Amazonの商品ページや出品者情報ページも、この「広告」に当たる部分です。
対象になるのは「販売業者」、つまり販売を業として営む者です。消費者庁の「インターネット・オークションにおける『販売業者』に係るガイドライン」は、「業として営む」とは営利の意思を持って反復継続して取引を行うことをいい、転売目的で商品の仕入れ等を行う場合は営利の意思があると判断される、としています。法人か個人かは問いません。このガイドラインはインターネット・オークション向けの文書ですが、冒頭で特定商取引法上の「販売業者」の意味を説明しています。
Amazon公式ヘルプ「特定商取引法(特商法)及びその他の法令に基づく表示」も、(1)大口出品者および法人の出品者、ならびに継続的に繰り返し出品している個人出品者には特定商取引法で義務付けられている事項の表示を、(2)出品商品に法令上必要な許認可・登録・届け出がある場合はその番号の表示を求めています。出品プランの違いは大口出品と小口出品の違いで整理しています。
法律が求める表示事項(特定商取引法第11条)
e-Gov法令検索の特定商取引に関する法律第11条は、通信販売の広告に表示しなければならない事項を定めています。条文に直接書かれているのは第1号から第5号までで、第6号が「主務省令で定める事項」として、事業者の氏名・住所・電話番号などを省令に委ねています。消費者庁のガイドは、これらをまとめて次のように整理しています。
| 区分 | 表示事項(消費者庁「特定商取引法ガイド」の整理) |
|---|---|
| 価格 | 販売価格(送料についても表示が必要)、販売価格・送料以外に購入者が負担すべき金銭があるときはその内容と額 |
| 支払 | 代金の支払時期、支払方法 |
| 引渡し | 商品の引渡時期(期間または期限で表示) |
| 申込み・解除 | 申込みの期間に関する定めがあるときはその旨と内容、契約の申込みの撤回または解除に関する事項(返品特約がある場合はその内容を含む) |
| 事業者 | 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号。法人がインターネット等で広告する場合は代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名 |
| 責任・条件 | 契約不適合の場合の販売業者の責任についての定めがあるときはその内容、販売数量の制限など特別な販売条件があるときはその内容 |
このうち返品に関する事項は、Amazonで販売する場合も重要です。通信販売にはクーリング・オフの規定はありませんが、特定商取引法第15条の3により、購入者は商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでは申込みの撤回・契約の解除ができます(引取り・返還の費用は購入者負担)。ただし販売業者が広告に返品特約を表示していた場合はその特約によります。Amazon上の返品条件と実務はAmazon出品者の返品・返金対応で解説しています。
Amazonの出品者情報ページに表示する項目
Amazon公式ヘルプは、対象となる出品者に対し、Amazonサイトの「出品者の情報ページ」に次の情報を表示しなければならないとしています。情報は常に最新のものに更新するよう求められています。
| 項目 | Amazon公式ヘルプが求める内容 |
|---|---|
| 販売業者名 | 法人出品者は登記簿上の名称、個人出品者は戸籍上の氏名 |
| お問い合わせ電話番号 | 消費者からの問い合わせ対応等のために現に使用されている、出品者自身の電話番号 |
| 住所 | 現に事業活動をしている住所(私書箱等は不可)。建物名・部屋番号も正確に表示。個人出品者も事業所の所在地を表示し、事業を行っている場所が自宅である場合でも例外ではない |
| 運営責任者名 | 出品に関する業務の責任者の戸籍上の氏名(法人の場合、代表権を有する者でなくても可) |
| 店舗名 | Amazonサイトにおける出品者の店舗名 |
| 許認可情報 | 法令上表示が義務付けられている許認可・登録・届け出の種類と番号 |
屋号や店舗名だけでは足りない点は、消費者庁の説明と一致しています。消費者庁「通信販売広告について」は、個人事業者の「氏名(名称)」は戸籍上の氏名または商業登記簿に記載された商号を記載する必要があり、通称や屋号、サイト名は認められないとしています。住所についても、番地を省略した不正確な表示や、現に活動していない私書箱等の住所のみの表示は認められないと明記されています。
なお同ヘルプによると、継続的に繰り返し出品しない個人出品者は、店舗名のみを表示するように設定できます。出品者のプロフィールから「私は、特定商取引法で定める販売業者に該当します」に対して「いいえ」を選ぶ方法ですが、「いいえ」を選んだ場合でも、Amazonが対象と判断したときは「はい」を選択して表示するよう求められる場合があるとされています。仕入れて販売する物販を続けるなら、表示する前提で準備してください。
セラーセントラルでの設定場所
表示内容は、セラーセントラルの「設定」から「出品用アカウント情報」を開いて編集します。Amazon公式ヘルプに記載されている項目ごとの入口は次のとおりです(2026年9月時点・画面の名称は変更されることがあります)。
- 販売業者名:出品用アカウント情報の「正式名称/販売業者名」をクリックし、編集して「更新」をクリックする。
- お問い合わせ先電話番号:「表示名」をクリックし、カスタマーサービスの詳細ページで電話番号を更新する。
- 住所:「会社住所と電話番号」をクリックし、「新しい住所を追加」を選択して保存する。
- 運営責任者名:「表示名」をクリックし、カスタマーサービスの詳細ページで運営責任者名を更新する。
- 店舗名:「表示名」をクリックし、ストアの詳細ページで店舗名を更新する。
- 許認可情報:出品者情報のセクションで「日本のライセンス情報」をクリックし、ライセンスの種類を選んで番号を入力し、送信する。
ライセンスの種類として同ヘルプに挙げられているのは、古物商許可証番号、医薬品販売業許可証番号、通信販売酒類小売業許可証番号、酒類小売業許可証番号、高度管理医療機器販売業許可証番号です。中古品を仕入れて販売するために古物商許可を取得している場合の表示と許可の要否は、Amazon物販と古物商許可を参照してください。入力後は、Amazonサイト側の出品者の情報ページを実際に開き、正しく表示されているかを確認するよう同ヘルプは求めています。アカウント開設時の入力全体の流れは出品用アカウントの登録手順にまとめています。
個人出品者の氏名・住所・電話番号は省略できるか
自宅で物販をしている個人にとって、氏名と自宅住所の公開は最も気になる論点です。法律上の整理は消費者庁「通信販売広告Q&A」に示されています。
請求があれば遅滞なく開示する旨を表示して省略する場合(Q15・Q17)
特定商取引法第11条ただし書は、請求により表示事項を記載した書面または電磁的記録を遅滞なく提供する旨を広告に表示する場合、表示事項の一部を表示しないことができると定めています。Q&AのA15・A17は、次の2つを満たす場合に、事業者の氏名(名称)、住所および電話番号の表示を省略することも可能だとしています。
- 消費者からの請求によって、広告表示事項を記載した書面または電子メール等を「遅滞なく」提供することを広告に表示していること
- 実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じていること
ここでいう「遅滞なく」とは、販売方法等の取引実態に即して、申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることをいう、と説明されています。なお、返品に関する事項(返品の可否・期間等の条件・送料負担の有無)は、この方法でも省略できない事項とされています。
プラットフォーム事業者・バーチャルオフィスの住所を表示する場合(Q18)
A18は、住所は「現に活動している住所」、電話番号は「確実に連絡が取れる番号」を表示する必要があるとしたうえで、次の措置が講じられ、その要件が満たされる場合には、プラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所・電話番号の表示によっても特定商取引法の要請を満たすと考えられる、としています。
- プラットフォーム事業者の住所・電話番号を表示する場合、その個人事業者の通信販売に係る取引の活動が、当該プラットフォーム上で行われること
- 表示する住所・電話番号が、取引を行う際の連絡先としての機能を果たすことについて、個人事業者とプラットフォーム事業者またはバーチャルオフィス運営事業者との間で合意がなされていること
- プラットフォーム事業者またはバーチャルオフィス運営事業者が、個人事業者の現住所および本人名義の電話番号を把握しており、両者の間で確実に連絡が取れる状態になっていること
ただし、個人事業者・プラットフォーム事業者・バーチャルオフィス運営事業者のいずれかが不誠実で、消費者から連絡が取れないなどの事態が発生する場合には、表示義務を果たしたことにはならないとされています。また私書箱については、A19が「住所」の表示をしたことにはならないと明確に否定しています。
消費者庁Q&AをAmazonにそのまま当てはめてよいか
ここで注意が必要なのは、消費者庁のQ&Aは特定商取引法の解釈を示したものであり、各プラットフォームが自社の規約でどこまで認めるかは別の問題だという点です。Amazon公式ヘルプ「特定商取引法(特商法)及びその他の法令に基づく表示」のページには、開示請求に応じる旨の表示による省略や、Amazonの住所・バーチャルオフィスの住所を表示する方法についての記載はありません(2026年9月時点で確認した範囲)。同ページが求めているのは、あくまで次の内容です。
- 個人出品者の販売業者名は戸籍上の氏名
- 電話番号は、現に使用されている出品者自身の電話番号
- 住所は、現に事業活動をしている住所(私書箱等は不可)。自宅で事業を行っている場合も例外ではない
したがって、Amazonで販売する場合は、まずAmazonの出品者情報ポリシーを確認し、その要件どおりに表示するのが安全です。事務所を別に借りる、バーチャルオフィスを契約するといった方法を検討する場合は、その住所が「現に事業活動をしている住所」というAmazonの要件と、消費者庁Q&AのA18の条件の双方を満たすのかを、契約前にAmazonの出品者向けサポートと、消費者庁「特定商取引法ガイド」に掲載されている問合せ窓口に確認してください。「この方法なら自宅住所を出さずにAmazonで販売できる」と断定できる公式情報は、上記の公開ページの範囲では確認できません。
表示に不備がある場合のリスク
表示義務違反のリスクは、法律上のものとAmazon上のものに分かれます。
| 区分 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 指示 | 第11条等に違反し、取引の公正や購入者の利益が害されるおそれがあると認めるとき、主務大臣は是正等の必要な措置を指示でき、指示をしたときは公表される | 特定商取引法第14条第1項・第3項 |
| 業務停止命令 | 利益が著しく害されるおそれがあると認めるとき、または指示に従わないとき、2年以内の期間を限り、通信販売に関する業務の全部または一部の停止を命ずることができる | 同法第15条第1項 |
| 指示違反の罰則 | 6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり) | 同法第71条第2号 |
| 業務停止命令違反の罰則 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり) | 同法第70条第3号 |
| Amazon上の措置 | 情報が表示されていない場合、または虚偽の情報を表示した場合、出品の一時停止、出品資格の永久停止等を含む、Amazonが適切と考える措置を取る場合がある | Amazon公式ヘルプ |
消費者庁のガイドも、行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示(法第14条第1項)や業務停止命令(法第15条第1項前段)、役員等の業務禁止命令(法第15条の2第1項)等の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなると説明しています。Amazon上の措置を受けた場合の考え方はアカウント健全性の見方とアカウント停止時の審議申請を参照してください。
公開前のチェックリスト
出品を始める前、および住所・電話番号・許認可に変更があったときは、次の点を確認します。
- 販売業者名が、個人は戸籍上の氏名、法人は登記簿上の名称になっている(屋号・店舗名だけになっていない)
- 住所が番地・建物名・部屋番号まで正確で、私書箱になっていない
- 電話番号が現に使用しているもので、営業時間内に確実に連絡が取れる
- 古物商許可など、表示が義務付けられている許認可の種類と番号を登録している
- Amazonサイト側の出品者の情報ページを開き、実際の表示を確認した
- 引っ越し・移転・電話番号変更の際に更新する手順を決めている
電気用品など、商品側に法令上の表示や届出が必要なカテゴリーを扱う場合は、出品者情報とは別に規制商品(PSE等)の出品ルールも確認が必要です。個人で開業して出品する場合の税務上の手続きはAmazon物販の確定申告と開業届で整理しています。
- Amazon出店ロードマップで、いま自分がどの段階かを確認する
- カテゴリ別の売れ筋×推定月販で、参入するカテゴリの需要を見る
- 商品ページのデータ例で、1つのASINの推定月販・BSR・価格推移・出品者数の見え方を確認する
- FBA利益計算機で、仕入れ前に手数料込みの粗利を出す
よくある質問
Q. 個人でAmazonに出品する場合も、本名と自宅住所を表示しなければなりませんか?
A. Amazon公式ヘルプは、継続的に繰り返し出品している個人出品者に特定商取引法で義務付けられている事項の表示を求めており、販売業者名は戸籍上の氏名、住所は現に事業活動をしている住所とし、事業を行っている場所が自宅である場合でも例外ではないと明記しています。継続的に繰り返し出品しない個人出品者は、店舗名のみを表示する設定が可能とされています。
Q. 屋号や店舗名だけを販売業者名として表示してもよいですか?
A. 認められません。消費者庁の通信販売広告Q&AのA16は、個人事業者は戸籍上の氏名または商業登記簿に記載された商号、法人は登記簿上の名称を記載する必要があり、通称や屋号、サイト名のみを表示することは認められないとしています。Amazon公式ヘルプも個人出品者の販売業者名は戸籍上の氏名としており、店舗名は別の項目として表示されます。
Q. バーチャルオフィスの住所を特定商取引法に基づく表記に使えますか?
A. 消費者庁の通信販売広告Q&AのA18は、連絡先として機能することの合意があり、運営事業者が個人事業者の現住所と本人名義の電話番号を把握して確実に連絡が取れる状態にある等の条件を満たす場合、バーチャルオフィスの住所・電話番号の表示でも法の要請を満たすと考えられるとしています。一方、Amazon公式ヘルプにはこの扱いの記載がなく、現に事業活動をしている住所の表示を求めているため、Amazonの出品者情報ポリシーを確認してください。
Q. 私書箱の住所を表示することはできますか?
A. できません。消費者庁の通信販売広告Q&AのA19は、特定商取引法での住所とは営業上の活動の拠点となる場所を指し、私書箱を表示しても住所の表示をしたことにはならないとしています。Amazon公式ヘルプも、住所は現に事業活動をしている住所とし、私書箱等は不可と明記しています。建物の名前や部屋番号も正確に表示する必要があります。
Q. 表示した電話番号には24時間対応しなければなりませんか?
A. 消費者庁の通信販売広告Q&AのA20は、一般常識として夜間等営業を行っていない時間帯については、留守番電話等を利用することは構わないとしています。ただし電話番号は確実に連絡が取れる番号である必要があり、使用されていない番号の表示や、意図的に常に電話を取らない状態にしている場合は、確実に連絡が取れる番号を表示したことにならないと説明されています。
Q. 特定商取引法の表示をしなかった場合、どのような処分がありますか?
A. 特定商取引法第14条第1項の指示、第15条第1項の業務停止命令(2年以内の期間)の対象になり得ます。指示に違反した場合は第71条により6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、業務停止命令に違反した場合は第70条により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められています。Amazon公式ヘルプも、未表示や虚偽表示に対して出品の一時停止や出品資格の永久停止等の措置を取る場合があるとしています。
参考文献・出典
- 特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号) - e-Gov法令検索(デジタル庁), 2026年9月閲覧
- 特定商取引法ガイド:通信販売 - 消費者庁, 2026年9月閲覧
- 特定商取引法ガイド:通信販売広告について - 消費者庁, 2026年9月閲覧
- 特定商取引法ガイド:通信販売広告Q&A - 消費者庁, 2026年9月閲覧
- インターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドライン - 消費者庁, 2026年9月閲覧
- 特定商取引法(特商法)及びその他の法令に基づく表示(G200365160) - Amazonセラーセントラル ヘルプ, 2026年9月閲覧
※本記事はAmazon公式・所管官庁の公開情報を2026年9月21日時点で整理したものです。手数料・基準・法令は改定されるため、申請や判断の前に必ず出典元の公式ページで最新の内容をご確認ください。税務・法務の個別判断は税務署・所轄官庁・専門家にご相談ください。